新聞連載⑤「住み続けられる地球と住まい」新築

しんぶん赤旗に2022年4月1日から4月29日 毎週金曜日に連載

 新築の場合

 真っ白なキャンバスのように何でも描けるのが新築住宅の醍醐味(だいごみ)です。当然、都市計画や建築法規を守らなくてはなりませんし、土地の条件から制約も出てきますが、建て主や家族の希望と設計者の創造力が合致して、形や間取りが作られていくのは感動です。
 しかし地球は、産業革命以来わずか300年で急速に気候変動を引き起こし、環境ホルモン、マイクロプラスティックなどの環境汚染も深刻となり、私たちの生活を脅かしています。地球温暖化を抑えようと世界規模で、省エネルギーや二酸化炭素の排出規制が叫ばれています。
 住まいでは、シックハウス症候群、化学物質過敏症などの問題が起きて、私たちの健康を深くむしばんでいます。人類は安易な便利さを反省し、根本から住まいと暮らしを見直す必要に迫られています。この地球に住み続けていくために、住宅を建てる際は何が重要でしょうか。

 再生可能な材料で

 日本では木や土や草、そして和紙を昔から使い住文化を培ってきました。それらは人や地球にもやさしく、安全で、調湿や断熱、蓄熱などにも優れていることが、科学的にも検証されてきました。
 木は50年から100年も木材として使うことができます。持続可能な社会では、住宅を100年以上大事に使っていきたいものです。木材だけではなく、自然素材の多くは土に返り、バクテリアの栄養となり、さらに二酸化炭素固定に大きく役立ちます。地球共生の素晴らしい姿です。
 私たちは自然素材を活用した家づくりを実現するために「多摩産直住まいづくりの会」を組織し、東京・奥多摩の山の木を使った家づくりを勧めています。木材の伐採現場、丸太市場、製材所の見学会も開催しています。
 屋根は、住まいの中で一番過酷な自然環境を受け止め、風雨や熱射、紫外線から家屋を守ってくれます。その屋根材で一番長持ちするのは、粘土を焼いた本瓦です。通気層があり、熱を遮断する性能も高い優れた材料です。最近では耐震性に劣るとして、ふき替えられることが多くなっていますが、重さに耐える躯体(くたい)があれば、素晴らしい材料です。
 都市部では軒を十分に出せない家が多くありますが、日本のように雨の多い所では、雨から壁を守り、日射を調節する大切な役割を担っているのが深い軒です。深い軒に守られた板壁や漆喰(しっくい)・土の外壁は50年以上の耐久性を持っています。10年で補修を必要とする樹脂塗装の現代住宅とは大違いです。何よりも大量生産、大量消費からの脱却が必要です。

 地震国、日本の住まい

 大地震があるごとに耐震基準は厳しく改正されてきました。最近では建築基準法の1・25倍~1・5倍の耐震性能が求められるようになっています。一方では、固い構造を造るのではなく、免振構造や制振構造といって地震の力を逃がし吸収する方法も普及しています。伝統的な日本建築の考え方です。
 さらに重要なのは地盤です。液状化するような軟弱地盤では、いくら耐震性のある建物を造っても傾いたり倒れたりしてしまいます。建物の重さ、地震の揺れに耐えるように、地盤改良することが重要です。
 断熱気密性能の向上とエアコンの普及で、室内温熱環境は大きく改善されました。しかし冬場は外気に接する窓や壁で結露が発生し、また暑い夏でも、室内の温度を下げるために相対湿度が80%を超えて、カビの発生を生み出すことがあるので注意が必要です。
 エアコンではなく、放射熱を利用した輻射(ふくしゃ)パネルによる効率的な冷暖房を行うこと、屋根で温められた空気で床下のコンクリートを温め、空気循環しながら家全体の熱をコントロールすること、太陽熱や地熱エネルギーを利用した省エネ化など、なるべく機械に頼らない省資源の家造りを心がけています。                              (了)

 

 

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